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北極圏で見る白夜の満月

 トロムソの夏の白夜も、気が付けばあと一週間弱で終わります。

 「極夜」の始まりと終わりは、空が明るくなる時間帯が日々刻々と変わり、目に見える景色の変化も分かり易くてドラマチックなのですが、「白夜」というのはどうも日々の変化が分かりづらくて、しかもそれが真夜中なので夜半過ぎまで起きていないと確認できないこともあって、正直言ってあまり面白くありません。"Midnight Sun(真夜中の太陽)"が一度見られれば、まぁ良いかなという感じです。

 一晩中明るいというのにもすっかり慣れて、全く違和感は感じなくなってしまいましたが、(太陽物理学者ではない)天文学者としては、やっぱり満天の星空が観られる暗い夜が来る方が好きなのだと思います。


最近の夜はこんな感じです。

23:00の白夜に映える北極教会
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対岸のトロムスダーレンの風景。
西日というか北日が反射しています。
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西斜面のお宅は一晩中煌々と日が当たるので、
夜は大変だろうなと思います。
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* * *

 以前「白夜の満月はどう見えるか?」という質問をコメントで頂きました。

 冬に「極夜の新月」がどう見えるか?というのを確認しようと頑張りましたが(1/12記事参照)、同様に白夜の間は「満月」に注目していました。

 今年の「白夜の満月」は、見られるチャンスが3回ありました。5/21、6/20、7/19の夜です。ですが、結論から書くと、またしても悪天候にやられて、いずれの日も満月を見ることは叶いませんでした…。


昨日7/19の夜のトロムソ。どよ~ん。
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 北極圏の白夜の満月ですが、ざっくり考えると「真夜中の太陽」の正反対にある満月なので地平線下に沈んでいそうですが、南中時には少しだけ地平線より上に上がってきます(極夜の新月が見えるのと同じ理由です)。5/21は仰角3.8度、6/20は1.2度、7/19は2.6度という具合。夏至の時が一番低くて、確認するのは難しい満月です。


 ところで、

菜の花や
月は東に日は西に

という江戸時代の俳人、与謝蕪村によって詠まれた有名な句があります。菜の花咲く春のある日、太陽が西に沈むそのとき、東の空から美しい満月が昇って来たという句です。

 これが、実は白夜のトロムソになると、

***や
月は南に日は北に

という日本ではありえない状況が実現するはずです。真夜中の太陽が北に最も低くなるその時、南の空に美しい満月が昇っているという句になります。
 トロムソでこの句を詠むのを密かに楽しみにしていたので、低く垂れこめる雲が本当に恨めしいです。どうか、白夜にトロムソに来られる皆さん、南の満月と北の太陽をぜひ同時にご覧になってください。

 因みに、「***」の部分には、何の花が適当でしょうか?

 トロムソで5/21の頃に咲いていた花であれば、黄色い「プリムラ」が満開でした。

プリムラや
月は南に日は北に

 6/20の頃は、あまり面白くないけど「タンポポ」が咲き乱れていましたね。

タンポポや
月は南に日は北に

 7/19の今頃は、なんでしょうねぇ。「ライラック」かな…?(字余りですが)

ライラックや
月は南に日は北に

* * *

 一応、白夜の満月探しを頑張った証に、満月一日前・月齢14.1の南の空に掛かる月の写真を紹介します。この日も既に雲が多くて苦しかったのですが、一応月は見えました。北の太陽は、この場所からは視認できませんでしたが、遠くの山並みが照らされているのが分かるので、確かに地平線の上に出ています。
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 この日の仰角は6.1度。結構、高いところまで昇っています。次の日に満月が見えていれば、この半分の高度ぐらいのところに輝いていたはずです。
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 望遠鏡ではなく、デジカメで目いっぱいズーム。低空+天候下り坂なのでシーイングは悪く、ぼけぼけですが。
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by tac_sato | 2016-07-20 19:46 | 北極圏の白夜の話 | Comments(2)  

Commented by 矢口 at 2016-07-21 21:07 x
有り難うございます、解りました。

ところで、トロムソと日本では同時に月が見える日が少ないですね、
緯度の関係で毎日EME通信とは行かないようです。

ところで、初歩的な惚けた質問です。
 日本の子供向け絵本では、就寝時刻の夜に下弦の月の絵があったりして
「なーんだ夜寝ではなくて昼寝か?」と思うことがあるのですが、

トロムソでも月は日本と同じ三日月、半月となるのでしょうか?
Commented by tac_sato at 2016-07-22 04:55
> 矢口さん
もちろん月の満ち欠けの形は日本とトロムソで変わりませんが、天空での動き方は大きく異なるのが特徴的です。

例えば月の昇り・沈みは日本と比べてとても浅い角度になり、白夜の三日月は北北東から昇って南の低いところを太陽を追って水平移動し、北北西へと沈みます。

下弦の月は、日本では夜半に昇って昼に沈みますが、こちらでは夜半に昇って沈むのは夕方です。なので、絵本に下弦の月が書いてあっても(もちろん絵の方角に依りますが)夕方早めの就寝かもしれません。

しかし、こちらの理科の授業での「天体の見かけの動き」は、いったいどういうふうに教えているんでしょうね?
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